繁忙期の準備を1年前からはじめたら、“しっかりと失敗”できて過去最大の成果になった話

繁忙期の準備を1年前からはじめたら、“しっかりと失敗”できて過去最大の成果になった話

繁忙期の準備、皆さんはいつごろから始めていますか?

年に一度、あるいは数回やってくる繁忙期はとても重要ですよね。売上も注目度も高まる一方で、広告運用をしていると何かとバタバタしていて、毎回十分な準備ができずぎりぎりの中でなんとか乗り越えてしまう……そんな経験がある方も少なくないのではないでしょうか。

実は私も、業務に追われて繁忙期の準備に十分な時間が取れないことが当たり前でした。

新しい施策やクリエイティブに挑戦したくても、時間もリソースも足りず、結局“無難”な運用にとどまってしまい後悔ばかり。そんな私ですが、今回ご紹介するのは、なんと「1年かけて」準備をはじめたときの話です。

その結果は……「過去最高の成果」を出すことができました!

この記事では、私が実践した「1年かけて成果を出す繁忙期準備」の具体的なステップと、そこから得た学びをお伝えします。


どんな仕事をしているか

広告代理店でWeb広告を通してクライアントの目標達成に向けた戦略立案・クリエイティブ制作・広告運用を行っています。

クリエイティブ制作については、社内のデザイナーと手を組んで、訴求案など一緒に考えながらご支援しています。今回は広告運用者1名とデザイナー1名を中心にご支援したクライアントさんの事例をお話します。

前年の“悔しさ”がすべての出発点だった

この挑戦のきっかけは、前年の繁忙期で味わった強烈な「悔しさ」でした。

クライアントの担当に就いたのは前回の繁忙期。繁忙期前の担当者入れ替わりなどもあり、安全に広告を運用することの優先度が高く、攻めた施策の提案進行ができなかった点が非常に悔しかったです。

結果前年よりも良い結果に繋げられたものの、自分の力だという実感はなく「もっと準備して良い結果が出せたはずはずなのに」という想いが強く残りました。

そこで、まずしっかりと前年の繁忙期の振り返りを行いました。見えてきたのは小規模に検証を始めた動画広告の効果が大きい点でした。これまでバナー中心の広告配信だった中で、多角的に訴求を伝えられる動画広告は1つの切り札になる兆しが見えていました。

しかし、動画広告は1本出来上がるまでにも台本作成・撮影・編集とプロセスが多いことが特徴です。そのため、やり直しが効かない繁忙期の施策として用いるには、十分に試行錯誤のできる時間と環境、つまり「動画制作そのものに慣れる」ことが必要だったのです。

こうして、「1年前からの準備」がスタートしました。

「1年は長い」なんて、やってみたら思えなかった

実際に準備を始めてみると、1年間は決して長くはありませんでした。むしろ、やるべきことが次々と出てきて、あっという間。時間が足りないくらいでした

ざっくりではありますが1年間の検証スケジュールはこのように進めました。こう見るとかなり過密スケジュールだったなと振り返って思います。

ざっくり1年間の準備スケジュール
1-3か月目:新訴求軸でのバナー検証
4-6か月目:1本目動画制作
7-8か月目:2本目動画制作
9-10か月目:3・4本目動画制作
10か月目より本格的な繁忙期突入

動画提案は予算面でも工数面でもハードルが高く、正直、クライアントとの信頼関係もまだ十分ではありませんでした。

まずは動画広告提案を受け入れていただけるような小規模な検証を実施し成果に繋げる必要がありました。そのため最初数カ月はバナー検証を行い、提案を受け入れていただけるような関係構築を優先しました。

たとえば、過去のデータを基にした新しい切り口でのバナー訴求が好調だったことや、提案した改善案がCVR向上に寄与したことなど、目に見える「小さな成果」を積み重ねるといったイメージです。そうすることで、次第に「この人たちの提案ならやってみよう」と思っていただけるようになり、信頼関係が少しずつ築かれていったと思います。

その後は動画広告をひたすら検証し続ける日々が始まります。

計画通りにはいかないことも。けど1年あれば巻き返せる

1本目の制作は、台本の内容を入念に練り準備をしっかりしたため、かなり好調な結果が得られました!

ただ、チームで初めて動画を作り上げるのには、想定していた2倍も3倍もの時間がかかってしまいました。「新しい挑戦には時間がかかる」と改めて痛感。これが繁忙期前の余裕が状況だったらと思うと、余裕のあるスケジュールがどれだけ重要か実感することができました。

また、2本目の動画はみごとに「失敗」しました。

1本目の動画で「成功」を経験しているので、この2本の差分を分析していくと失敗の要因を見つけることができました。動画導入部分から対象ユーザーを限定しすぎた訴求になっていたためです。

一方、成功した動画では、あえてターゲットを少し広げ、多くの方が『自分ごと』として捉えられるような入り口にしていることに気づきました。

また、SNSで気になる動画を自然と見てしまうような、リアルな質感を編集で生み出すことも重要なことがわかりました。その結果、ブランドの世界観を保ちつつも親近感が湧き、商品の魅力がより身近に、そしてリアルに伝わる動画が作れるようになったのだと分析しています。

こうして見えてきた課題を次の動画制作の際に意識しなおして準備に重点をおいて進めていくと、スケジュールはぎりぎりでしたが繁忙期に使用する動画を効果が出せる形で作成することができたのです。

繁忙期本番で大きな失敗をするのに比べ、時間的余裕がある中での小さな失敗は、むしろ大きな学びを得るための貴重な機会となります。全体成果に影響しない範囲でリスクを管理し、次につながる知見を得ることこそ、広告運用者の腕の見せ所です。この経験を通じて、その重要性を身にしみて理解できました。

“小さな成功”の積み重ねがカギ

1年かけて準備を進める中で、最も大きな収穫の一つは「信頼」の積み重ねでした。


クライアントとの間では、ひとつひとつの検証や成果を必ず共有し、どんな小さな成功でも言語化して伝えることを徹底しました。「この改善が成果につながった」「この挑戦が今後の可能性を広げる」というように、進捗や変化を可視化することが、信頼感につながっていきました。

社内のチームにおいても同じです。特に動画制作は、運用者だけでなく、デザイナーや編集者など多くの人の力が必要になります。そのため、互いの領域にリスペクトを持ち、遠慮せずに意見を言い合える関係を築くことを意識しました。

台本作りは一緒に壁打ちしながら進め、構成や表現に対してもフラットに話せる関係があったからこそ、より良いクリエイティブが生まれたと思います。

また、繁忙期が近づくにつれ誰もが忙しくなる中でも、あらかじめしっかりとコミュニケーションを積み重ねておくことで、必要最低限のやりとりでスムーズに意思決定ができる体制を作ることができました。結果的に、準備段階の「余白」が、本番の「スピード感」を生み出す、そんな好循環が生まれたのです。

「頑張りすぎない仕組み」を作る

前年の繁忙期を振り返ると、正直なところ「何とか乗り越えた」という印象が強く、体制的には持続可能とは言えないものでした。限られた人数で多くの業務を抱え、疲弊してしまう場面も少なくなかったのです。

そこで、今回は準備の最後の仕上げとして「体制づくり」にも注力しました。

■前回繁忙期の体制
クリエイティブ:1名
広告運用者:2名

■新体制
全体統括・広告運用者:1名
クリエイティブ統括:1名
クリエイティブ:1名
アシスタント:1名(設定をスポットで依頼)
その他制作や施策進行で困ったときに頼る人:3名

具体的には、前回の3名体制から、全体統括・クリエイティブ統括・アシスタント・外部サポートメンバーまで含めた7名体制へと大幅に強化しました。

もちろん、クライアントと直接やりとりをするのは引き続き限られたメンバーですが、バックアップ体制を整えることで、個人の負担が偏らず、安定的に高品質な運用を維持できる仕組みが整いました。

加えて、繁忙期開始前にクライアントにも体制を明示し、安心感を持ってもらうことも意識しました。社内外の関係者が「このプロジェクトの一員」であることを共有することが、チーム全体の士気向上にもつながりました。

準備が整ったからこそ、繁忙期は「走るだけ」過去最高の成果へ

こうして1年間準備を重ねた結果、迎えた繁忙期はまさに「駆け抜けるだけ」でした。

あらかじめ目指すゴールと施策の方向性が定まり、必要なクリエイティブも揃っていたため、余計な迷いはありませんでした。現場で必要なのは「判断」ではなく「行動」!

すでに検証を重ねていたおかげで、成果の出る動画クリエイティブや配信設計が整っており、PDCAを高速で回しながら改善に集中できる環境がありました。そのスピード感と一貫性こそが、今回の大きな強みだったと感じています。

また、事前にクライアントと施策やKPIについてしっかりと握れていたことで、突発的な変更やトラブル時も、冷静にスピーディーに対応することができました。準備段階で積み上げた「信頼」と「共通認識」が、繁忙期の現場判断をよりスムーズにしました。

結果として、クライアントからは「過去最高の売上になった」という嬉しい言葉をいただき、私たちにとっても大きな自信につながる経験になりました。

この記事を書いている今も、すでに次の繁忙期に向けた新たな検証は動き出しています。1年かけて準備し、さらに良い成果を出す、それは一度きりではなく再現可能な「型」として、私たちの武器になってきていると感じています。

未来から逆算して『今できること』を始めよう

今回の経験を通じて私が強く実感したのは、「十分な準備」は一度きりの成果ではなく、何度でも成果を再現できる「武器」になるということです。

繁忙期は、ただ頑張って走り抜けるだけではなく、どれだけ「準備」に投資できるかで結果が大きく変わります。しかもその準備は、失敗を恐れず挑戦するための「余白」を生み出し、チームやクライアントとの「信頼」を積み重ね、最終的には安定して成果を出し続ける「型」へと昇華していきます。

そのために、まずは次の繁忙期に向けて、以下の行動から始めてみてください。

  • 前回の繁忙期を振り返り、改善点を洗い出す
  • 次回に向けた仮説と目標を立て、クライアントと共有する
  • 失敗も織り込んだ上で、早めに小さな挑戦を始める
  • 小さな成功や学びを積み重ね、信頼を育てる
  • 無理のない体制づくりを意識し、余裕を確保する

本質は「1年かけること」そのものではなく、『目先のサイクルにとらわれず、常に数か月先を見据えて動く』ことです。まずは「翌々月のこと」を考えるだけでも構いません。たったひとつの行動でも、今始めれば次の繁忙期には確実に景色が変わります。

次の繁忙期にクライアントの期待を超えた成果と、良好な関係性を生み出すために、未来から逆算して『今できること』を始めてみましょう。

計画的に準備することはきっとクライアントからもより高い信頼を得られるチャンスになります。ぜひ前回の繁忙期の振り返りを行うことから始めてみてください。

関連記事