「デザイナーはビジネスの参謀になれる」マーケティング視点を持つデザイナーが、商売にどう向き合っているのか
クリエイティブチーム発足時から初期メンバーとして関わり、現在はチームリーダーを務める関さん。実は入社時は運用型広告エキスパート職としてキャリアをスタートし、4年目にWEBデザイナー職へ転身。今では、マーケティング視点に基づくクリエイティブで成果を出しながら、メンバーやクライアントをリードする存在です。クリエイティブチームの拡大とともに進化してきた関さんに、仕事に向き合う姿勢や成果を出すための習慣を伺いました。

広告運用者からWEBデザイナーへ。ビジネスを“俯瞰”する視点が生まれた転機

ーーー関さんは2017年に入社されてから2020年のクリエイティブチーム立ち上げまで、運用型広告エキスパート(以下、運用者)として働かれていましたよね。どのような経緯でWEBデザイナー(以下、デザイナー)になったのか教えていただけますか?

「立ち上げメンバーの1人としてデザイナーにならないか?」と声をかけてもらって、特に迷うことなく決めました。何でもとりあえずやってみるタイプなのと、社内の運用者から誰かがデザイナーになるなら、「たしかに自分だろうな」と自然に思ったんです。

というのも、当時のアナグラムには現在のようにデザインを行う部署がなく、必要なときは運用者が自分でクリエイティブを作るか、それが難しい場合は外部に依頼するしかありませんでした。自分で作るのはハードルが高いですし、外部に依頼するのは工数もかかりますが、クリエイティブが広告の成果に与える影響って大きいじゃないですか。だから自分の担当案件では自身で大量にバナーを制作して成果につなげていたんですよね。

当時の上長からは「こんなにクリエイティブを作る人が前任だと、引き継ぐときに後任が大変だ」と言われたくらいで(笑)、それくらい社内で自分ほど制作していた運用者はいなかったと思います。

もともと広告業界でのクリエイティブ重要度が高まっているのは体感していたし、会社としてもデザイン機能を内製化したい。となれば、それはもう「(自分がクリエイティブチームの一員となって)やるでしょ」と。断る選択肢はありませんでしたね。

ーーー役割が変わったことで、成果を追う意識は変化したのでしょうか?

はい、数字だけでなく、その「奥」にいるユーザーや「外側」にあるビジネス全体にも目が向きやすくなりました。今思えば運用者のころから必要なことではあったのですが、デザイナーになって物理的にも管理画面から距離ができたことで、自然とそうなれた感覚があります。

配信結果のデータはもちろん重要ですし、デザイナーになった当初は数字から遠のいてしまうような不安も少しありましたが、より広い視点でビジネスを捉えるよいきっかけになりました。

ーーークリエイティブチーム全体では、発足から現在までどのように試行錯誤されてきましたか?

当初は運用者から細かく依頼をもらって制作を進めることが多かったのですが、徐々にデザイナーからも案を出しながら制作する場面が増え、現在では運用者と同じく、マーケティング戦略を考える上流工程から案件に関わるようになっています。

制作するフォーマットや施策の幅も、初期はバナー(静止画の広告ビジュアル)がほとんどだったところから、この数年のうちにランディングページ(広告をクリックした後に遷移する詳細ページ。通称「LP」)の設計や、動画の脚本〜撮影まで、かなり広がってきました。

運用者が広告の設計から運用、分析、改善までを一貫して行う「一気通貫」の体制を取ってきたように、デザイナーも、デザイン戦略についてクライアントと直接やりとりして主体的に提案しながら制作も担うかたちに進化してきたんです。

2024年からは一部のデザイナーが各ユニット※の案件を専属で担当するようになり、運用者と以前にも増して密に連携できるようになりました。

(※ユニット=チーム(3~6人程度)が複数集まって構成される、20人程度のまとまりのこと)

ーーー「一気通貫」へと進化してきたことで、成果にはどのような影響があったのでしょうか?

広告業界全体でクリエイティブの影響力が年々高まる中で、デザイナーが案件を主導できると、より早くインパクトの大きな貢献がしやすいと実感しています。ビジネスの全体を見通して制作できるので、的確な施策をサッと実行して成果につなげやすいですね。

さらに最近は、ディレクション(主に同じ案件に関わるメンバーに役割を割り振りつつ、施策の進行を切り盛りし、とりまとめる役割)を担うデザイナーも増えてきました。 他にも、デザイナーでありながら広告の運用を経験するメンバーや、クライアントへの初回提案をメインで担当するメンバーも出てきています。

一緒に働く他のメンバーを見ていても「デザイナーだから」「運用者だから」といって仕事の幅を制限することはないですね。クリエイティブチームに所属するデザイナーでいえば、人数も20名弱にまで増え、それぞれ過去の経験や得意分野も違うので、お互いから刺激を受けて出来ることの幅も広がりつづけています。

成功事例をデザイナーから全社に向けて共有できる機会も格段に増えてきました。

デザイナーは、単に”作るだけの人”ではない。”ビジネスの勝ち筋を描き、自分の手で形にできるマーケター”だ。

ーーーこれまでの変遷を振り返って、関さん個人にとって特に印象深かった変化があれば詳しく教えてください。

自分にとって大きな転機になったのは、現在のようにユニットを専属で担当するようになったことですね。ユニットの方針から、デザイナーであっても運用者と一緒に「ビジネスが育つフレームワーク」を学べる研修の機会が豊富にあります。

「商材の魅力を深く理解するリサーチ方法」や「その魅力を最大限に表現する手段の選び方」「最終的にどんな記事LP(商材の特性を順序立てて訴求する記事型の詳細ページ)設計や動画構成に落とし込むか」など、メンバー間で共通言語ができるので、担当の案件でスムーズに連携しながら即実践していきやすいです。

研修を活かしてクライアントに貢献できるのはもちろん、知識がどんどん自分の物になっていく感覚があります。すぐに検証できるので仕事が本当に楽しいです。

ーーーいきいきとクライアントのビジネスに向き合っているのが伝わってきます。

実はインタビューを受けることや人前で話すことにも以前は抵抗があったんですが、仕事の成果で自信をつけるうちにいつからか気にならなくなっていました。

研修では、これまで「なんとなくこうだろう」と感覚でやっていたことが、ぴたりと言語化されたように感じる瞬間も多いです。やっぱり間違っていなかったんだという手応えがあり、それも自信につながっているかもしれません。

ーーー運用者と同じく、デザイナーもマーケティング戦略の立案から案件に関わるようになった今、デザイナーならではのやりがいはどんなところにありますか?

 一番のやりがいは、描いた戦略を自分の手でビジュアルとして形にできることだと思います。戦略を立てるだけでなく、それを実行まで完結させられるのは、デザイナーならではの強みですね。だからこそ成果に対する責任感や達成感も大きくなります。

もちろん、成果に対する意識そのものは運用者と変わりません。手段は違っても、どちらもクライアントの課題を解決するという意味で、同じマーケターやコンサルだと捉えています。

リサーチ9割、実行1割。型を磨き、成果が出ても改善し続ける

ーーー成果を出すために、日々どのような取り組みをされていますか?

成果の9割はリサーチで決まると思っています。クライアントの商材を体験してみるのはもちろん、競合調査やユーザーインタビューなど、複数の観点をいったりきたりしながら、”クライアントビジネスへの理解”を厚くしていくんです。

どうすれば成果が出るか?をとにかく考え抜いて、良さそうな施策を見つけたときは、一度マネして試してみる。その上で、成果が出るまで何度も改善を繰り返します。やれることは全部やるので、日々新たな発見も多いです。最近は、動画のキャスティングが成果に与える影響をもっと検証していきたいと思っています。

ーーー試行錯誤の過程も楽しんでいるんですね。

考え抜いて「(このビジネスを伸ばせる戦略は)これだ!」という筋道が見つかると、迷いがないので熱を持って提案できますし、ロジックや熱量がクライアントさんにまっすぐ伝わって、ちゃんと”刺さる”んです。

自分で考えて成果を出すことが本当に楽しくて好きなんですよね。時間を忘れて手を動かしてしまうことがあるので、最近ではもはや趣味といえるかもしれません。仮説が当たった瞬間なんて、脳汁がドバーッと出ます(笑)

ーーー関さんは成果に貪欲で、行動派の印象があります。何か原動力になっているものはありますか?

実は自分は結果に対してあまり期待しないところがあって、その分自分への「やらなきゃヤバいぞ」という強迫観念があるから、早め早めに手が打てるんです。あと、以前は人前で話す場面で緊張しやすかったんですが、心から”相手のために”という気持ちで準備や本番にあたると、不思議と力まないんだと気づきました。

現在チームリーダーとしてマネジメントするなかでも、”部下の(成果を作る)ために”という視点は持っていますね。自分自身を理解して仕事に取り組んできたのと同じく、メンバーへの働きかけ方を無意識に調整している点で、部下もマーケティングの対象といえるかもしれません。

何かを上から授けるというよりは、自分が仕事を楽しむ姿勢を刺激にしてもらいたいと思っています。部下が悔しさを感じているかもしれない場面で、様子を見ながらあえて明るく発破をかけたりとか。一緒に働いていると小さな成長が日々の仕事から感じられて、やっぱりうれしいですね。

ーーー最後に、今後「どんなチームや仕事をつくっていきたいか」「どんな人と働きたいか」を教えてください。

今後は、デザイナーが主導する案件をもっと増やしていきたいです。やっぱり、デザイナーの価値は「どれだけビジネスの成果を生み出せるか」だと思っているので。

向いているのは、デザインを「作品」として極めたい人よりも「手段」として使いこなして成果に結びつけたい人。そういう人にとって、アナグラムはすごく挑戦しがいのある場所ですし、売れるデザイナーを目指すなら面白い環境だと思います。