パナソニック株式会社(foodable(フーダブル))
パナソニック株式会社
くらしアプライアンス社 CX事業開発室
サービス事業開発部 キッチンCX推進課
谷一 恵子 さま

パナソニックの新規事業「foodable(フーダブル)」は、キッチン家電と食材をセットで届けるサブスクリプションサービスです。しかし、訴求できる内容に一定の制約があったことで、CPA(顧客獲得単価)が高騰することもあったという。

特典による集客は継続利用につながらず、広告代理店を変えても状況は好転しない。そんな手詰まりを打開したのは、「体験価値」を軸にした広告戦略の再設計でした。

コースごとにターゲットを分けたクリエイティブ検証で注力すべき商材を見極め、ユーザー目線の動画広告で”暮らしが豊かになる体験”を届けることで、CPAを最大5分の1に改善。特典に頼らない獲得体制を実現した、その取り組みの裏側をfoodable事業担当の谷一恵子さまに伺った。

このインタビューは、2026年01月に行われました。

聞き手:アナグラム株式会社
金子 俊子
西尾 美紗姫

金子(アナグラム):本日はよろしくお願いします。まずは改めて、「foodable」について教えていただけますでしょうか。

谷一さま:「foodable」は、パナソニックのキッチン家電とこだわり食材を組み合わせて、お客様に「新たな食体験」を届けるサブスクリプションサービスです。月額料金をお支払いいただくと、新品のキッチン家電と、その家電に合った食材が毎月届きます。いつでも解約できる手軽さもポイントですね。

金子(アナグラム):家電と食材がセットで届くのが大きな特徴ですよね。谷一さまはこのサービスでどのような役割を担われていますか?

谷一さま:主に新規会員の獲得を担当しています。ただ広告まわりだけではなく、倉庫の在庫管理も見ています。獲得した会員数に応じて機器を調達しなければなりませんし、在庫が余りすぎれば収支が悪化してしまう。新規獲得の見込みと機器の供給、その両方のバランスを見ながら動いている形ですね。

画像引用元:foodableより引用

ブランドイメージを維持しながらの獲得訴求に苦戦

金子(アナグラム):弊社にご相談いただく前は、別の広告代理店で運用されていたと伺いました。当時はどのような課題がありましたか?

谷一さま:立ち上げ当初はブランディングが得意な広告代理店にお願いしていました。ただ、インプレッションは伸びても獲得にはつながらず、CPAが高騰することもあって……。その後、EC獲得に特化した別の広告代理店に切り替えたのですが、そこでも状況は大きく変わりませんでした。

金子(アナグラム):EC支援に強い広告代理店でも難しかったのですね。

谷一さま:はい。ブランドイメージを大事にサービス提供をしていたため、通販サイトのような獲得重視のクリエイティブには振り切らず、獲得を伸ばすにはかなりの工夫が要る状況でした。

そこで、購入のハードルを下げるためにプレゼントキャンペーンを活用した訴求も試みたこともあります。しかし、本来届けたい層とは異なるユーザーが増えてしまって、サービスの価値を届けたい方にきちんと届けられていない、という焦りがありましたね。

制約がある中でも、サービスの価値を正しく伝えながら成果を出せるパートナーを見つけたい。当時はずっとそう考えていました。

“家電のレンタル”ではない。体験価値を軸に広告戦略を再設計

金子(アナグラム):そうした経緯を経て、3社目として弊社を選んでいただきました。

谷一さま:はい。アナグラムさんは最初から「foodable」というサービスそのものに真剣に向き合ってくれた印象が強く残っています。使い回しの提案資料ではなく、こちらの事情やサービスの特性を汲み取ったうえで、「どうすれば価値が伝わるか」を一緒に考えてくれましたよね。

金子(アナグラム):ありがとうございます。私たちがまず取り組んだのは、foodableの強みの整理でした。単なる価格訴求でも「家電のレンタル」でもなく、「家電のポテンシャルを引き出す食材が届くことで、毎日の生活が豊かになる」という体験価値こそがfoodableの本質的な強みだと考えました。

谷一さま:その整理はとても腑に落ちました。社内でも「サブスクで家電を使えるサービス」と説明しがちだったのですが、それだけでは本当の魅力が伝わらないとは感じていたんです。

金子(アナグラム):LPの改善もご相談いただいていましたが、foodableにはホームベーカリーや炊飯器、オートクッカーなど多様なコースがあり、すべてのLPを一度に改修するには時間もコストもかかります。そこでまずは小回りの利く広告運用で「どのコースなら勝てるか」を検証し、優先度をつけてから本格展開するアプローチをご提案しました。

コースごとにターゲットを切り分け、注力すべき商材を見極める

金子(アナグラム):最初に取り組んだのは、静止画バナーによるコース別の検証です。以前はターゲットやニーズが異なるコースをまとめて配信されていましたが、コースごとにターゲットを切り分けて配信設計をやり直しました。

谷一さま:以前はコースごとの需要がつかめておらず、予算配分も手探りでした。アナグラムさんに整理してもらったことで、コースごとのターゲットと成果の関係が見えるようになり、成果に応じて柔軟に予算を動かせるようになったんです。

その中で驚いたのが、「コンパクトベーカリー」のコースが想定以上に伸びたことでした。

金子(アナグラム):元々は炊飯器コースが主力でしたよね。検証してみて、ここまでコンパクトベーカリーが跳ねるとは嬉しい誤算でした。

谷一さま:社内でも「コンパクトベーカリーはサブスクと相性がいいはず」とは感じていましたが、想像以上の反応でしたね。

必需品の炊飯器にくらべて、コンパクトベーカリーは「なくても困らないけど、あったら楽しそう」という立ち位置の家電です。foodableなら、場所を取らないサイズ感で、焼きたてパンのある生活を月額で手軽に試せる。「小さいし、安いし、やってみたい」というお客様の気持ちにうまくハマったのだと思います。

画像引用元:コンパクトベーカリーより引用

“体験”が伝わる動画広告で、獲得の勝ち筋をつかむ

金子(アナグラム):コンパクトベーカリーでの手応えを受けて、次のステップとして「体験」をよりリッチに届けるための動画広告に取り組みました。

谷一さま:動画施策は社内でもとても好評でした。御社のサービス「タテプロ」でマイクロインフルエンサーの方にご出演・制作を依頼したのですが、パナソニックとしてのブランドの品格を保ちながら、生活者のリアルな目線で「暮らしに馴染むイメージ」を表現してもらえたんです。

実際に制作した動画

金子(アナグラム):サイズ感や手軽さ、暮らしの中での使い方など、静止画では伝えきれない「体験」を動画に盛り込むことで、「生活が豊かになる」というfoodable本来の価値がしっかり届いた手応えがありました。

中でも効果が大きかったのは、メーカー発信だとなかなか触れにくい「使わなくなるんじゃないか」というユーザーの不安にあえて正面から向き合った動画です。

谷一さま:「使わなくなるよね」とは、さすがにメーカーの口からは言いにくいですよね(笑)。でも、ユーザー視点でその不安を正直に口にしたうえで、「foodableならこう使える」という解決策を見せたことで、かえって信頼感につながったのだと思います。

結果として、静止画だけでは獲得が難しかったコーヒーメーカーなどのコースでも、動画で体験を伝えることで獲得につながるようになりました。コンパクトベーカリーのコースでは、月間の獲得件数が約5倍に伸びたこともあります。

サービス本来の魅力で獲得できる体制が整ったのは、私たちにとって大きな転換点でした。

勝ち筋を他のコースにも展開。獲得の先のLTV向上へ

金子(アナグラム):今後の展望についても聞かせてください。

谷一さま:まずは、今回見えた勝ち筋を他のコースにも広げていきたいですね。コンパクトベーカリーで成功した「体験を伝える動画」のアプローチを、オートクッカーや炊飯器のコースにも展開していく予定です。

ただ、獲得数を追うだけでは事業は伸びません。今後はLTV(顧客生涯価値)やCRM(顧客関係管理)の領域にも力を入れていきたいと考えています。

金子(アナグラム):獲得したお客様に長く使い続けていただくための施策ですね。

谷一さま:そうです。食サービスならではの季節の旬の食材やイベントレシピを提案しながら、お客様の毎日の生活を豊かにするお手伝いができると思っています。

食材の追加提案なども含め、単なる家電のサブスクにとどまらず、お客様の食生活を支えるパートナーとして事業を育てていきたいですね。

金子(アナグラム):私たちも、獲得の仕組みづくりだけでなく、その先のLTV向上まで一緒に取り組んでいきたいと思っています。本日はありがとうございました。

Voice Of AdOps担当者の声

プロジェクトを通じて改めて感じたのは、「体験で語る」ことの強さです。スペックや価格ではなく、「この家電がある暮らしはどう変わるのか」を見せる。その訴求が届いた先にいたのは、サービスの価値を本当に求めている方々でした。

もう一つ意識したのは「大きく変える前に、小さく試す」ことです。多コース展開のサービスでLP全改修から入ると、時間もコストも膨らみます。まずは広告クリエイティブの検証で「どのコースが、誰に響くのか」を見極め、勝ち筋が見えたコースから集中投資する。この順序が、限られたリソースで成果を出すうえで大きかったと感じています。

クリエイティブの面では、「メーカーが言いにくいことほど、ユーザーは聞きたがっている」という発見がありました。商品やサービスへの不安は、売り手が触れなくても消えるわけではありません。むしろ第三者の目線で正直に触れたうえで解決策を示すほうが、信頼につながる。谷一さまと何度もご相談を重ねたからこそ踏み込めた判断です。

foodable(フーダブル)
パナソニック株式会社