ありがたいことに運用型広告に携わる方から「いつも読んでいます」や、ときには「研修に使っています!」との声を頂くこともあり、大変嬉しい限りです。
ただ、これまで「なぜ、アナグラムがブログ運営にこれほどまでに力を入れるのか?」「何のためにやっているのか?」「どのように運営しているのか?」については、あまりお伝えしていませんでした。そこで現編集長、マーケチームのチームリーダー藤澤さんにアナグラムのブログ運営についてがっつり迫り、その全貌を明かしたいと思います。
―――藤澤さん、今日はアナグラムのブログ運営について、一読者のような立場で根掘り葉掘りお伺いしたいと思っていますので、よろしくお願いします。
アナグラムのブログは最低でも週に1記事、最近では週に5〜6記事を更新することも珍しくないですよね。しかも全員が執筆を担い、編集を行う専任のマーケチームを置くなど、ブログ運営にとてもリソースを割いています。アナグラムがブログ運営にここまで力を注ぐのはなぜですか?
まず、アナグラムのブログのスタートから話しますね。最初の目的は「信頼を得るため」です。
原型は代表阿部の個人ブログで、「個人で仕事を始めたころに一度だけ営業をやったけど、話すらまともに聞いてもらえなかったのがブログを開設したきっかけ」と聞いています。無形商材ということもあり、どこの誰か分からないひとがいきなり「広告運用やらせてください」と言っても、そもそも困ってなかったりスキルも所在も良く分からないひとには任せないですよね。話すら聞かないのも当然です。
それならば困っている方から相談してもらえるようにと、当時は情報が少なかったリスティング広告に関するブログを毎日アップしていたのが始まりです。そのまま法人化した後も更新を続けていたのですが、阿部だけが情報発信をしていると、たとえば現場メンバーがヒアリングに行ったときに「あれ?阿部さんはこないんですか?」と言われてしまうんですよ。
阿部個人へ、ではなく会社として信頼してもらい仕事を任せて頂くためにも、社内の色んなメンバーが情報発信をするようにしていきました。
―――「信頼を得ること」を目的として始まったアナグラムのブログですが、現在もその要素はもちろんありつつ、おそらく最初の役割とは少し変わってきているのではないですか?
はい、それはすごく感じていて、今となってはブログは一石四鳥にも五鳥にも、それ以上のメリットを感じています。ブログ経由で採用にも繋がっていますし、実際に応募者の方から「いつもブログ読んでます」「助けられています」と言っていただくことも少なくありません。手前味噌ではありますが、「記事のクオリティにこだわっていることで確かな知識を持っている会社だ」と認識していただいているのかなと。
「営業」と「採用」は対社外への影響ですが、実は社内への貢献度も高いんです。
まずアウトプットを通して執筆者自身のスキルアップにつなげられること。「誰に、何を、どう伝えると分かりやすいか」は、広告コピーでもメールでもチャットでも、あらゆるコミュニケーションにおいて重要です。ブログにせよ動画や音声にせよ、アウトプットするにはまず考えや知識を構造化しなければいけません。この「構造化してアウトプットする能力」ほど汎用性の高いスキルはないんじゃないでしょうか。
マネジメントにおいても自分の考えを分かりやすくメンバーに伝えるのは重要なので、いい記事を書ける人ほどマネジメントも上手だなと感じますね。
また、社外に対して、会社のドメインでアウトプットすることはそれなりの責任が伴います。だからこそちゃんと調べたり考えたりして、正しい情報・ちゃんと役に立つ情報を発信する必要がありますよね。執筆や編集を通して、誤った認識を訂正する役割も担っています。
この「書くことが本人にとってプラスになるよ」「だからこそ会社のためではなく自分のために書いてほしい」ということは伝え続けていきたいです。「自分の成長のためにアナグラムのブログを利用してやるぞ」くらいの気持ちでいてほしいですね。
―――ぼんやりとした考えを、書こうとすることで構造化が必要になり、それをやっておくと口で伝えることもスムーズになる、結果マネジメントも上手くいくというのはしっくりきますね。ブログの執筆を通してより深い知識を得るというのもまさに体感しています。
そして教育の面でも貢献度は大きいです。ブログは資産なので、これまでアナグラムに所属したあらゆるメンバーの知見やノウハウが体系的に残されています。教える側としても感覚や経験に頼るだけでなく、社としての知識を体系立てて伝えることができます。実際に研修の中でもブログはかなり活用していますし、ブログ記事に書きづらい内容も含めてノウハウデータベースの整備は進めているところです。
さらにブログは社内コミュニケーションのきっかけにもなります。社員数が100人を超える規模になってきて、誰がどの媒体に詳しいのか、誰がどの機能に詳しいのか、を把握することが難しくなってきます。「このブログ記事を書いているから、この人はこの分野には詳しいんだな」と認識出来れば、誰に聞けばよいのかが分かり、相談もしやすくなりますよね。
―――ブログを運営するにあたって、マーケチームが大事にしていることを教えてください。
3つあるかなと思います。
1つ目で最も重視しているのは、「それが1人でも誰かの役に立つなら発信するべき」ということ。誰の役にも立たない情報を発信することは、意味がないどころかマイナスなので。だからこそ自分が困ったけど、調べても分からなかった(分かりづらかった)ことを記事にするのがいいですよね。誰か1人が困ったことって、絶対他の誰かも困って調べているんですよ。それが1人か10人か1000人かはそれほど重要ではないかなと思いますね。
2つ目は十分な知識をもったうえで発信できる内容かどうか。運用型広告に関しては詳しいのはもちろんですが、少し領域を広げた記事を書く時に、企業としてその知識をちゃんと持っているか。「広告運用者が知っておくべき会計・ファイナンスの知識」や「広告運用者が最低限知っておくべき、インボイス制度の知識」は、運用型広告を軸にファイナンスや税制に踏み込んだ記事ですが、経理や監査役、パートナー弁護士などの知識も総動員して書き進めました。逆にそれができないテーマには広げるべきではないと思います。
―――正しさを重視するためにも、無理にマーケチームだけで記事を完成させようとはしないということですね。
はい、無理です(笑)。最後3つ目は、誰かを傷つけたり、他を批判することで自らを相対的に正当化するような内容になっていないかどうか、ですね。ダサいじゃないですか。
―――全てとても大事なポイントですね。チームのお話があったので、いまの編集体制と公開までの流れについて教えてください。
マーケチームは自分も含めて7名。運用型広告のユニットが5つに分かれていて、それぞれのユニットに専属の編集担当がついています。編集はすべて広告運用の経験者が担当しています。ちなみに基本的にはマーケチームのメンバーもそれぞれ広告運用案件の担当もしているんですよね。変化の流れが激しいので、少し広告運用の現場から離れてしまうと途端に分からなくなってしまうので……。
まず企画段階は2パターンあります。
現場から「●●についての記事を書きたいです」と挙がってくるパターンと編集チーム側から「こういう記事書きませんか?」と書けそうな人に提案するパターン。こちらから提案するとなると、誰がどんなテーマで書けそうかを把握する必要があるので、やっぱりユニット専属にして良かったなと思いますね。
どんどんブログネタが生まれてくるメンバーもいれば、なかなかテーマが決まらないメンバーもいます。そういったメンバーに対しては、こちらから色々質問をしていくと「あ、それ記事に出来そうだね。」というテーマが見つかることも多いですね。テーマ決めや執筆の段階ではユニットによってはブログの「もくもく会」を実施して、その時間はオンラインで繋いでひたすらブログ執筆に関することだけをやる、という取り組みもやっています。
あと最近は積極的に書いているクリエイティブに関する記事も、クリエイティブチームに専属の編集担当がいます。とはいえデザインの専門的な知識は現場メンバーの方が持っているので、まさに執筆者と編集者二人三脚。編集側はコンサルを兼務しているので「広告運用者目線だとこういう情報もあるとよさそうですね」「ここはこう伝えると非デザイナーでも分かりやすいですね」など伝え方を意識しています。
ユニットごとに執筆・編集まで行った記事を、最終的に編集長の自分が確認して公開という流れですね。
―――ユニットごとに専任担当がいると、「この人はこれに詳しい」「この人はこういった書き方の癖がある」など人ベースで得意不得意も理解が深まって良さそうですね。企画から公開まではおおよそどれくらいの期間がかかっていますか?
執筆者や内容にもよりますが、平均すると3~4週間ほどですね。書き進めていくことで知識が足りていない部分が明確になって詳しく調べる必要があったりします。コンサルティングの業務も並行しているので、その間ずっと書き続けているわけではないですが、それくらいはかかりますね。クライアント優先ではあるので、場合によってはさらに長く時間を取ることもあります。
しっかりチェックを行ってクオリティを担保している一方で、この公開までのスピード感は課題の1つです。記事にはざっくりとスピードを求められるフロー記事と、いつ読んでも参考になるストック記事とがあるので、内容によって進め方を変えるなど見直しているところです。
―――編集は社内でも厳しいという声をちらほら聞きます。編集で見ているポイントを教えてください。
当たり前ですが「正しい情報かどうか」ですね。
そして実際に自分で試してみた、使ってみた内容かどうか。ヘルプやリリースだけを鵜呑みにして表面だけをなぞった記事って透けて見えるんですよね。究極ヘルプを分かりやすく書くだけならChatGPTで十分ですからね。そこに経験から出るアドバイスや一言が入ることが、人が書く意味かなと。ここがブログのオリジナリティだとも思っています。
コンサルが現場で売上ノルマを追っていないことに近いと思うのですが、ブログもPV数を重要指標にはしていません。例えば書いた記事のPV数まで評価する仕組みがあると、ある程度検索ボリュームがあり、上位表示を狙う記事に最適化されてしまいます。
「CPAの高い媒体は撤退するべき?「逆算式」と「積み上げ式」2つの広告ポートフォリオの考え方」のような記事はPV数主義だと出てきづらいですよね。
あとはアナグラムのブログがどういう過程でできて、どんな目的で、どんな思想で運営して、どのようなところに影響しているのか、などはちゃんとお伝えするようにしています。ある程度の緊張感を持って書いて貰うことも必要だと思うんです。「編集厳しい」と言われるのも、やっぱり決して緩くしてはいけないと思っていますし、一度緩めてしまうとまた締めるのは難しいので。
―――PVは重要指標ではないとのことですが、どんな指標を見ていますか?
定量的なものだと、半年ほどのスパンで主に採用への寄与、次点として問い合わせへの寄与がどれくらいあったかは指標として見ています。日々見ているのは、「役に立ちました」「助かりました」など読者からポジティブな反応が出ているか、実際にどんなコメントを頂いているかどうか、などですね。SNS上の反応は社内のSlackチャンネルに流れてくるようにしていますし、執筆者にもできるだけ届けるようにしています。
社外の方だけではなく、社内のメンバーがその記事をどう読んでいるのかというのも実は見ています。もともと入社が浅い方には、まず社内のブログを読んでコメントを貰うというのはメンターとメンティー間でやっていました。それが、最近社内のSlackに「アナグラムのブログを読んでコメントするチャンネル」が有志で立ち上がり、オープンな場で社内からもたくさんのフィードバックを貰えるようになったんです。社外の方よりも忌憚ない意見がもらえるのでめちゃくちゃありがたいですね。
社内の人が読んで良いと思う記事を書いてこそ、外部の方にも読んでいただけるのかなと。
―――最後に、いつもアナグラムのブログを読んでいただいている方にメッセージはありますか?
本当にいつも見ていただいてありがとうございます。Twitterやお問い合わせでフィードバックを頂くことも多くてとてもめちゃくちゃありがたいです。コメントを添えて記事をシェアしていただいたり、アナグラムのブログ読者の方は素敵な人ばかりで嬉しい限りです。
もし「~~みたいな記事があると嬉しい」とかは、SNSや匿名の質問ツールなどで頂けると嬉しいですね。今後は可能な限りそういったリクエストにもお答えしていきたいです。
頂いたコメントは現場のメンバーにもできる限りシェアしていて、やっぱりコメントいただくと嬉しいですし、モチベーションにもなるんですよね。ぜひもっとください(笑)