Google アドワーズの広告のローテーション設定のベストプラクティス

Google アドワーズの広告のローテーション設定のベストプラクティス
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広告をどのような優先度で配信するか

突然ですが広告のローテーション設定はご存知でしょうか?広告のローテーション設定では、広告グループに複数の広告がある場合に、広告をどのような優先度で配信するかを設定することが出来ます。

  • えっ、広告のローテーション設定って何??という新任広告運用者の方
  • もちろん広告のローテーション設定は知ってはいるけれど、具体的にはどの選択肢がベストなのかはちょっと自信が無い…という方

上記のような方に向けて、今回は広告のローテーション設定の概要と、設定の際の考え方について解説できればと思います。


広告のローテーションの種類

クリック重視で最適化

デフォルトで設定されている広告のローテーション設定です。より多くのクリックを見込める広告にオークションの機会を優先する設定です。

コンバージョン重視で最適化

より多くのコンバージョンが見込める広告にオークションの機会を優先する設定です。ただし、より多くのコンバージョンの見込める広告を特定できるだけの十分なデータが蓄積されていない場合、より多くのクリックの見込める広告を優先的にオークションに参加させます。

正確なロジックは不明ですが、コンバージョンを測っている広告主では、クリックとコンバージョンどちらの要素も加味されるので、「クリック重視で最適化」の上位互換とも言えると思います。コンバージョンを測っている場合は基本的には、コンバージョン重視で最適化に設定しておいて問題ないでしょう。なお、拡張CPCや目標コンバージョン単価などの入札戦略を選択した場合、「クリック重視で最適化」を選んでいても広告のローテーション設定が自動的に「コンバージョン重視で最適化」に変更されます。

※コンバージョントラッキングを行っている多くの広告主で推奨される広告のローテーション設定ですが、飲食店や美容院などを始めとする広告主を代表する店舗型のビジネスなどを筆頭として、すべてのGoogle アドワーズアカウントでコンバージョントラッキングを行っているわけではないでしょうから、デフォルトの広告のローテーション設定ではありません。

均等にローテーション

90日間均等にオークションに掛けられた後、自動的にクリックまたはコンバージョンに基づいて最適化されます。90日経過後、キャンペーンで目標コンバージョン単価、拡張CPC、目標広告費用対効果などコンバージョン目標の入札戦略を使用している場合はコンバージョン重視で最適化され、それ以外の場合はクリック重視で最適化されます。

無期限にローテーション

均等にオークションの機会が与えられます。名前の通りいつまで経っても最適化は行われません。

※なお、「均等にオークションの機会が与えられる」と「インプレッションが同じぐらいになる」とは意味が違います。あくまでインプレッションの前段階のオークションに参加する機会が均等になるだけなので、「無期限にローテーション」に設定した同じ広告グループ内の広告であっても、広告品質の高い広告がオークションも勝ちやすくインプレッションが多くなります。

参考:なぜ均等配信設定で広告のインプレッション数は均等にならないのか

広告のローテーションの設定方法

広告のローテーションはキャンペーンごとに設定が可能です。以下の手順です。


①対象のキャンペーンから[設定]をクリックし[すべての設定]を選択

②[広告配信: 広告のローテーション、フリークエンシー キャップ] > [広告のローテーション] で希望のものを選択し保存

 

なお、広告のローテーション設定は、Yahoo!スポンサードサーチでも利用することが出来ます。以下、設定方法です。


①対象のキャンペーンから[キャンペーン設定情報]をクリック

②キャンペーン設定情報画面の最下部にある[設定内容を編集]をクリック

③その他の設定にある[広告表示の最適化]より希望のものを選択し、設定内容を保存
Yahoo!スポンサードサーチでは広告のローテーション機能を利用できますが、YDNでは今のところ利用できません。すべて手動で成果を広告ごとに集計して停止判断などをする必要があります。

 

どの広告のローテーション設定が良いのか?

広告は直接ユーザーの目に触れるものですから、人の目と手でケアしていくべきものだと思います。ただし、現実的に広告運用者がケアできる範囲はごく限られていますし、手が回らないがゆえに機会損失が生じてしまうことがあります。広告運用者としては、限られた時間やリソースの中で最大の成果を上げなければなりません。ですので、広告の良し悪しのジャッジについてはテクノロジーに一任してしまう、というのも有効な一つの手になってきます。

もしまだ導入されたことが無ければ、一度クリック重視で最適化、コンバージョントラッキングを行っている場合はコンバージョン重視で最適化にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?(※以降、「クリック重視で最適化」「コンバージョン重視で最適化」をまとめて「広告の自動最適化」と呼びます)広告の自動最適化には以下のようなメリットがあります。

24時間365日調整してくれる

24時間調整してくれるので、パフォーマンスの悪い広告にコストを割くリスクを減らすことが出来るでしょう。人の手ですと集計はなかなか時間がかかりますし、各広告グループごとに1時間おきに集計して…というのはほぼ不可能です。さらに人間は眠らないといけないので深夜帯は調整が効きません。結果、広告の良し悪しの判断に十分なデータが溜まっているのに停止判断が出来ない期間が必然的に生じ、ここがまるまる機会損失になります。広告の自動最適化はこういった損失を少なくしてくれます。

スタートから最速で調整してくれる

同じ広告グループ内で複数の広告を同時にスタートすると、開始後に比較的早い段階で広告ごとのパフォーマンスに差が出てくることは珍しくありません。広告訴求の差が大きい、有効なABテストであればあるほどパフォーマンスの差は早期に出てくるため、配信開始後できるかぎり早く広告毎の傾向を掴み、最適化に繋げるスピード感が成果を大きく分けます。

しかしながら、手動で広告ごとの集計を行う場合は、広告の自動最適化を掛けている場合と比べてハンデがあります。人間が手動で対応する場合、せいぜい四六時中、管理画面に張り付いてデータの更新を待ちながらモニタリングするのが最速ですが、データもリアルタイムには更新されませんし、これは現実的ではありません。

また、Google アドワーズでは広告ごとに時間帯別のレポートを出力することもできません。このため、例えば配信開始日当日に、配信中の既存の広告と新規追加の広告で時間帯を合わせての比較も難しいです。変数の少ない同条件(同じ時間帯)で比較するにはどうしても翌日以降の判断となってしまうことがほとんどです。

短期間で決着するケースも多い広告の良し悪し判断においては、配信後すぐの初動の判断を「広告の自動最適化」に委ねることで、現状でもっとも最適な広告を優先的にユーザーへ表示することができます。

※最適化には、成果の高い広告を判断できるだけの十分なデータが必要です。

広告グループごと個別に最適化してくれる

人間だとどんなに頑張っても「毎朝重要ないくつかの広告グループを気掛けて見てみる」ぐらいが限界です。特に広告グループ数の多いアカウントでは、どうしてもすべての広告グループにぴったりな広告の良し悪しの判断が難しくなってくると思います。

例えば、たくさんの広告グループ数に対して手動で集計し停止判断を行う際は、広告グループを跨いで広告で用いている画像・訴求ごとの集計を行って全広告に対する停止の意思決定を一括で行うケースも少なくないと思います。

しかし、広告グループごとに配信されるユーザーもそのタイミングも異なるので、効果の高い広告も広告グループごとに変わってくるはずです。広告の自動最適化を設定していれば何千・何万の広告グループがあろうとそれぞれの広告グループごとに調整をかけてくれます。

工数が削減でき他のタスクに集中できる

広告のABテストの集計あたっては、広告を集計して、有意な差が生じているか確認して…などの工程が必要で、それなりに時間がかかります。しかも集計した末に有意なデータが取れなかったときなどは、せっかく集計したのが徒労に終わってしまったような気がして、少し切ないです。そういった時間を減らし別のタスクに充てられることは大きなメリットではないでしょうか?

※また、ここからはAdWordsヘルプに記載が無く憶測にはなってしまいますが、広告のローテーションで用いられている広告の自動最適化のロジックは、多腕バンディットテストなどの、単純なA/Bのスプリットランテストよりは素早く良し悪しの判断できるもので動いている可能性が高く、テストの最速化の一助となっていると思われます。

以上のように導入にあたりメリットの多い広告の自動最適化ですが、デメリットもあります。それは、どのようなロジックで広告のインプレッションが偏ったのか説明しづらいことです。

人の手で集計して統計検定を行って…という工程は手間ではあるのですが、どのようなロジックで広告の取捨選択を行っているのか上司やクライアントに説明がしやすい、というメリットがあります。上司やクライアントが統計や新しいテクノロジーに対して理解の少ない方だった場合、手動で集計して判断を行った方が理解が得られやすく、結果的にプロジェクト全体が円滑に回る場合もあります。

そのような場合は、敢えて「無期限にローテーション」を選択して人の手で広告の取捨選択をするのが最善というケースもありえると思います。

ただそのような場合でも、全体のパフォーマンスやスピード感を重視するのであれば、できるだけ理解を得られるように説明や説得を試みつつも、例えばテストの対象を一部に限定し残りは広告の自動最適化を行うなど、各関係者が納得できるよう取り計らうのも、広告運用者の大事なスキルだと思います。

広告の自動最適化と付き合うコツ

広告の最適化も魔法の杖ではありません。何でも広告をドンドン入れて行けばそれだけ成果が上がっていく…というほどシンプルにはいかないのです。いくつか利用にあたりコツをご紹介します。

データが溜まるように広告グループにボリュームを持たせる

広告の自動最適化は、広告グループ単位での最適化を行います。ですので、広告グループに最適化に必要な十分なデータが無い場合は、良し悪しの判断がつかずにパフォーマンスの悪い広告がいつまでも出続ける…というケースもありえます。広告グループの粒度が細かくなりすぎないように注意し、データが溜まりやすい構造に組むことは、広告のローテーションを素早く回すために重要な観点です。

一度にたくさん広告を入れ込み過ぎない

仮にデータの量がそれなりに確保できる広告グループだったとしても、広告を100本入れてしまうとどうでしょうか?最適化に必要なデータが溜まるのに、ほとんどの場合途方もない時間がかかってしまいます。どんなに無限に広告のアイディアが湧いてきたとしても、広告グループにオン状態で入れておくのは、自信のある広告3~5本程度に留めましょう。ある程度パフォーマンスが明らかになり、広告の配信ボリュームが偏ってきたタイミングで、成果が低く配信ボリュームの縮小した広告文の代わりに次の広告文を追加してテストを行えばいいのです。

差の出やすそうなクリエイティブを入れる

広告文もあまりにも似たようなものをテストに掛けてもあまり意味がありません。例えば広告文の末尾に「!」を含めるか含めないかでABテストを行っても、大きなパフォーマンスの差は期待できないでしょう。

スピードはあらゆるビジネスで大変重要で、せっかく工数を割いてテストを行うわけですから、差が大きく生じそうな広告文を入れるべきです。前進の幅は大きくなることが期待できますし、またパフォーマンスの差を素早く判断しやすいです。

最後に

広告は、その本質を突き詰めると、人や組織が意志やスタンスを表明し人に動いていただくものです。あくまで人や組織としてメッセージが発せられて、誰かしらが責任を負うべきもので、それはリスティング広告でも同様です。仮に今よりもテクノロジーが進み極限まであらゆる配信プロセスが自動化されたとしても、その本質的な部分、メッセージのエッセンスは人が考え、責任を負うということに変わりはないでしょう。(もしそうではなくなったときは、手塚治虫の漫画『火の鳥 未来編』のような人工知能が政治の中枢に立ち神と崇める世の中になっているときかもしれません)

ただし人がメッセージを発し責任を負うべきというのと同時に、広告運用者としては、広告費もリソースも限られている中で、多くの人に動いていただかなければなりません。そうしたときに、部分的に手の回らない工程をテクノロジーに任せてしまうというのは、あくまでテクノロジーの手綱を握り責任を取るのは広告運用者ご自身というのは留意するべきですが、有効な選択肢になりえると思います。

今回ご紹介した広告の自動最適化は、設定自体はかんたんで、「無期限にローテーション」でパフォーマンスの悪い広告が出続けていたアカウントだとすれば、僅かな工数で大幅な改善が見込めるかもしれません。そして、これまで集計に掛かっていた時間を新しい広告を考える時間に充てて継続的に広告を追加し、より多くの広告を素早く検証するという良いスパイラルに入られれば良いですよね!

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